みなさん、こんにちは。全く話題になっていませんが、水曜日に今年の教養区分申込状況が発表され、過去最高の申込者数を更新しました(H29:2,811人(うち女性968人)⇒H30:2,928人(うち女性1,036人)。ちなみに、経験者試験(係長級事務)も去年に比べて3割(200人)増となっています)。去年は「正直意外だ」と私はブログに書きましたが、今年は予想通りでした。ただし、私はこの結果について、大学生の就活市場における公務員人気の回復などとは全く思っていません。
申込者数がどれだけ増加しても(5年連続増で、しかも1,000名強の増加を記録しています)、教養区分試験の最終合格者は近年135名で推移していますので、ちょっとやそっとの準備じゃ合格できない試験であることは、皆さんも理解していることと思います。にもかかわらず、なぜこの5年間で1,000名強の申込者数増加につながるのか、私は次の2つが可能性として考えられるかと思います。
① 春試験との併願者の増加
既に述べたように、教養区分は最終合格はもちろんのこと、1次試験ですら10倍を軽く超える競争率です。それゆえ、本気で国家公務員を目指す人は春試験を本番として位置付けており、教養区分試験は合格できれば儲けものという感覚で臨んでいると思います(うちも、経済区分受講生には「来年のための予行演習として受験してくれ!」と受験を勧めたくらいですから…)。ただ、これを申込者急増の主要因とするのは無理があります。というのも肝心な春試験が3年連続で減少(人数にして約900名)しており競争倍率も低下しているからです(学部法文系の場合)。
② 試験勉強の負担が軽く、合格した場合、民間企業の就活を気兼ねなく出来る。
これが教養区分試験の最大の魅力でしょう。しかも、民間就活の経験はそのまま、翌年夏の官庁訪問に活きます。教養区分の申込者急増の最大の要因は、間違いなくこちらでしょう。当然ながら、競争は厳しく、既に述べたように、この試験に合格できる人はごく少数です。それゆえ、理屈から言えば大多数の人は春試験にシフトするはずなのですが、肝心の春試験は教養区分の申込増加分とほぼ同じくらいの申込減少が続いている…。すなわち、教養区分試験が国家公務員の人気回復につながっていないことが、この試験の最大の問題といえます。
もちろん、教養区分試験がなかったら状況はもっと悪化しているという見方も理にかなっているので、教養区分試験の是非について論じるつもりはありません。ただ、勉強負担の軽さを理由にこの試験に飛びついている人に対しては、負担の軽さは全ての受験者共通であることを改めて認識してほしいと思います。
私は毎年受講生に対して「教養区分は18歳までの努力の程度を評価する試験、春試験は大学時代の努力の程度を評価する試験」とはっきり言ってます。もちろん、どちらが優秀かなんて私にはわかりません。だいたい、現職組に聞いても、「教養区分で入省した人はきついこと言うとすぐ落ち込んで引きずるから嫌だ」という人もいれば、発想の柔軟さや優秀さを非常に高く評価する人もいるのですから…。
ただし、教養区分合格者は特定の大学に集中しており、その最大の要因は学力面ではなく受験機会にあることだけは指摘しておくべきでしょう。択一試験を東京と大阪の2か所でしか実施しないのですから、当たり前と言えばそれまでなのですが、多様性社会を掲げるのならば、せめて択一試験だけでも、春試験ほどでなくてもいいので、各地域で実施すべきだと思います。そうすれば、旧帝大の学生の比重はもっと高まると思います(少しずつ比重は低下しているものの、最終合格者135名中100名強を東京で占めるのはやっぱり異常です)。
その結果、公務員人気が回復するのかどうかは怪しいですが、内定者の属性については今以上に多様化するのは確実だと思います。もちろん、現在も最終合格者だけをみると、主要大学ならば合格者がそれなりに出ていますが、教養区分は官庁訪問まで時間があるので十分準備ができるのに対して、春試験は合格発表から間髪入れずに官庁訪問がやってきて、まともな準備期間もないのが現状です。加えて、地方の場合、説明会の機会すら限られています。全国の優秀な大学生に関心を持ってもらうにはどうすべきか、小手先の制度変更よりも、受験機会の均等という根本的な部分にもっと目を向けるべきでしょう。
3年生(または公務員試験自体がはじめての人)にとっては、試験勉強をはじめて間もないこともあり、一次試験通過自体がかなり大きなハードルなのは間違いありません。しかし、たとえギリギリであろうとも通過してしまえば、択一の点数なんか、時間にしてわずか20分足らずの人物試験(人事院面接)よりも配点比重が低いのですから、再チャレンジ組を逆転することは、専門試験を重視する春試験に比べてはるかに容易です。また、「本番は来春だ!」と思えば、さほど緊張することなく試験に臨むことができるでしょう。合否とは関係なく、択一試験では30問正答(念のため、1次試験通過のためには最低でも35問は必要になります)を目標にしてくださいね。来春にむけて、本当に楽になりますから…。
一方、最近の教養区分では春試験で2次落ちした人や官庁訪問リベンジ組の人も多いです(幾度となくブログにも書いていますが、私は彼らの教養区分受験には否定的です)。そうしたみなさんは、自分たちのアドバンテージは択一試験にしかないことをしっかり自覚しておくべきです。特に、2次試験や官庁訪問において、自分のどこが至らなかったのかしっかり自己分析し、その克服に向けて努力しない限り、本当に教養区分の2次試験(そのすべてにおいて現職が関与します)がトラウマになり兼ねません。十分な準備をおススメします。
試験近くではありますが、モチベーションを高めたい人向けに、ただいま、『CIMAアカデミー&アガルートアカデミー共催省庁別少人数説明会』の参加者を受け付けています。第1弾は農林水産省です。
日時:9月20日(木)18:30~(2時間程度)
講演者:白鳥 幹久・環境省 環境再生・資源循環局 総務課課長補佐(平成21年農林水産省入省)
後半は、秘書課採用担当者およびCIMAアカデミーOBの農水省職員も交えた座談会も実施します。詳細は、こちらをご覧ください。あと3名ほどで受付を終了しますので、少しでも関心のある方は積極的にお問い合わせください。
それではまた。