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周りがどうとかではなく、自分が社会とどう関わりたいのか考える

更新日:2020年2月6日


 みなさん、こんにちは。ずいぶん長い間ブログを更新せず、ごめんなさい。みなさんは春休みに入った頃だと思いますが、私はというと、先月末は法定調書の作成に追われる最中に大学の定期テストを抱え、いまは採点&成績評価に追われています。毎年のことですから、かなり前倒しで採点業務を進めてきたつもりなのですが、あと1週間で400名分の成績評価を終えなきゃいけない状況に追い込まれています…。

 先日、今年度の国家公務員試験の試験委員が公表されました。法律や政治国際と異なり、経済区分の場合、専門記述の試験委員変更は革命といってもいいくらい出題傾向が大きく変わりますが(最近だと、経済政策のミクロ分野の試験委員が大竹先生から大橋先生に変わった時かな?)、今年は2名も交代しますので、しっかり対策をしておきましょう。ここ数年は、官僚バッシングに加え、周りも勉強していないから白紙同然じゃない限り最終合格までは何とかなっていましたが、採用予定数が65名と前年に引き続き抑制傾向にあるので(法律の20名減に比べればマシですが…)、誰かの話を鵜呑みにしてぶっつけ本番で臨むのはやめた方がいいですよ。


 今日の話は試験委員変更のことではなく、先月弊社で実施した特別講演会についてです。このブログでも幾度となく宣伝してきましたが、先月17日に久米 隼人・厚生労働省大臣官房人事課課長補佐(当時 なお、以下では敬称略とします)を講師としてお迎えし『これからの霞が関での働き方とキャリアを考える』と題する特別講演会を実施しました。


 昨夏大きな反響を呼んだ厚生労働省改革若手チームによる『厚生労働省の業務・組織改革のための緊急提言』の代表である久米君の話ということもあり、社会人の方からの問い合わせはとても多かったです(官僚志望の学生に向けての話でしたので、当方の判断で全てご遠慮願いました)。ところが、肝心な学生はというと、うちの受講生を除いて全く反応がありませんでした… 。


(厚労省の業務説明会とは全く無関係だと明記したからでしょうか?正直、年末に実施した内閣府説明会との反応の違いに驚きました…)。


 社会人の方の参加を断ってきたことを後悔しても仕方ないので、最終的には一つ上の代や、転職の挨拶を希望していたけど延び延びになっていた元受講生にも声掛けしましたが、大学生はこの手の話には興味がないのだろうか(あるいは、近年はどの大学もキャリア教育というものが重視されており、講義として開講されているところもあるので食指が動かなかったのかも?)と、今もなお考え込んでいます。まあ、営業面からみれば、以前より受講検討中だった学生が、講演会をきっかけにコースの申込みをしてくれましたが…。


 内容はというと、社会人の方が期待していたであろう『厚生労働省の業務・組織改革のための緊急提言』絡みはそこそこに(提言にまつわる裏話ももちろんありましたが…)、核心は「働き方が変われば、霞が関は魅力的なキャリアなのか」ということで、霞が関の魅力の源泉について、中世キリスト教権威に準え世界史的観点から解き明かすとともに、それでもなお、霞が関は魅力的なキャリアたりうるのか、という点にありました。


 中世キリスト教の権威の源泉がキリスト教知識すなわち聖書の独占・教義の解釈権にあり、その教えに反する者は異端とされ、破門さらには火刑に処せられてきたことは、皆さんご存じだと思います。それに対し、原点たる聖書への回帰を唱えたのがルター等による宗教改革(余計な話ですが、プラハで一時期学んでいた私には、宗教改革=ヤン・フスなんですよね…。まあ、どんな教科書みても、フスは先駆的運動で片付けられてしまっていますが…)で、そのうねりに多大な影響を及ぼしたのがグーテンベルクによる活版印刷で、その結果、教会権威は大きく失墜し、中世は終焉を迎えました。


 翻って、我が国をみても権力の源泉は同様であり、これまでの日本の政策形成において、法令の解釈権・過去の政策過程の情報は政府にのみ蓄積され、莫大な費用をかけた圧倒的回収率のある統計は、政府の所属とされ且つ最初に利用されます。さらに政治・業界との政策調整はもっぱら政府の役割であります。その下で、各省庁は所管業界の必要な情報を集約し、その情報を基に政策立案を行ってきました。


 このように情報、言い方を変えれば「知」こそが権力の源泉であり、それが集積する(してきた?)霞が関が、これまで数多ある大学の中でもとりわけ知を重んじる場に所属する大学生に相当魅力的な職場と映っていたのは当然の帰結とも言えます。しかし、久米君によれば、現在では、ICT技術がパラダイム転換を引き起こしているとのことです。


 今では、法令解釈・政策情報などの多くはWEB上に上がっていますし、政府統計よりも大きなデータ規模を有するGAFAなどがマーケティングをする方が、よりきめ細かなサービスを行うこともできます。また、それらの統計情報を利用することで、有識者会議のメンバーでなくとも、専門家・現場の有識者が公に自由に意見を示し、交わすことで経済・社会分析や政策評価が可能になっています。さらに言えば、ビッグデータ・AIを活用すれば、複雑な社会問題にも正確な対応が可能になるし、情報漏洩の危惧に対しても、ブロックチェーンの技術を活用することで信頼性も担保できます。


 若者世代の社会貢献意識は全体としてかつてに比べ高くなっていますが、その中でも官僚志望者の社会貢献意識は目を見張るものがあります。これまでは、そうした社会貢献意識を実現する場として霞が関を考えていたのでしょうが、ICT技術を活用すれば、役所でなくても社会貢献はできますし事実そうした活動をしている人は多数存在しています。

 

と、ここまでの流れだと、「今さら霞が関を志望するのは時代遅れ」と思われがちですが、久米君が主張したいのはそういうことではありません(当然ですよね。わざわざ予備校にやってきて、そんなこと言ったら私、その場で怒ります)。社会を形成するのは制度です。制度は時代の要請に応じて変わるのが理想ですが、だれもが作れるものではありません。みなさんがそれぞれ関心ある分野で考えてもらえばわかるように、社会を大きく発展させるのも制度ですし、阻害要因になるのも制度です。


 霞が関にはこれまで培ってきた、法律・経済などの専門知識や社会・経済の構造への理解の深さに加え、中立的であるという武器があります。こうした担保があるからこそ、自分から行動を起こせば、民間企業では考えられないくらい、若くして最先端の人たちと協力・活躍する環境が用意されています。つまり、これからどのようなセカンド・キャリアを歩むにしても必要な「経験」「知識」「人脈」が若くして得られます。


 少し講演内容から外れます。講演会には転職した元教え子も参加したと書きましたが、転職先は、東大生の就職ランキングで毎年上位に来る外資系コンサルティング会社です。最近2年間、直接あるいは間接に教え子の転職報告を目の当たりにするようになりましたが、転職先はというと、BCG、アクセンテュア、デロイト・トーマツ、日本総研、NTTデータ…転職者の増加ぺースの速さに、自分のやってきたことは何だったのか考え込んでいます…。


 職業柄、コンサル人気には毎年圧倒されていますが、多少の偏見も込めて言えば、こうした職種を志望する大学生の多くは、ほぼ何も身に着けていない状態でセルフ・ブランディングに勤しむ姿が目立ちます。一方で、転職者の大学生時代を知る人間として言わせてもらうと、もしセルフ・ブランディングに長けた人間でないと就職できないとするならば、彼らは皆、そうした人間とは縁遠い世界に位置しているので、現役大学生の時分にこれらの企業を訪問して採用されたかといえばその可能性は低かったと思います(じゃあなぜ、転職できたのかについてはご自分で考えてください)。


 話を元に戻します。なんだかんだ言って、霞が関のリソースの優位性は依然確固たるものがあります。ゆえに、講演会の最後はこう結んでいました。

「自分次第で成長の可能性は無限に広がる。あとは、あなたが何をしたいのか」

当日の参加者は感じたと思いますが、講演者の久米君が言うと本当に重みがあります。


 昨夏の提言以降、特にSNS上では、実名、匿名問わず、堰を切ったように霞が関の劣悪な労働環境の実態が晒されています。社会的な関心を呼び起こすためには仕方ない手法だと思いますが、一方で就職活動中の大学生の中には、官僚になることに対して躊躇いが生じているのも事実でしょう。でも、そんな環境であっても、自ら求めれば、久米君のように社会の様々なアクターとの接点を持つことは十分できます(本当にいろんな人や団体と関わっていますし、今回の講演会も、実は彼からの提案であり、私はただその申し出に応えただけです)。


 

 今年の受講生は関西および海外在住の人もいるので、今回の講演会は収録し、受講生限定ではありますが視聴できるようにしてあります。私が最も危惧しているのは、ちゃんと視聴し、そして久米君にちゃんと疑問をぶつけているのだろうか、という点です。人気薄と言われようが、「待ち」の姿勢の人を求めるほど落ちぶれちゃいない、「攻め」の姿勢の人に一人でも響いてほしい、そんなところも感じてもらえれば、と願っています。

 それでは、また。


 


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