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人間に起因する誤りの全てがヒューマン・エラーというわけではありません。


 みなさん、こんにちは。世の中は成人式で賑わっているようですが、私は成人式に参加していないので、正直、何の感情もありません。

 実は、私にはどこからも成人式の通知が届きませんでした。当時、金沢で学生生活を送っていた私は、住民票も金沢市に移していました。でも、成人式の通知は私の元に届きませんでした。もちろん、住民票を移しているのですから実家に届くわけありません。その意味では、私は今もなお未成年で、皆さんより年下なのかもしれません(笑)。

 ちゃんと通知が届いている学生の方が圧倒的に多いのですから、正直面白くありません(結局、御祝い品何ももらえなかったのですから…)。成人式の日は、私と同様、通知が届かなかったサークル仲間とともに、成人式に興じている連中を妬んでいたような記憶が残っています。物事を俯瞰的と言えば聞こえがいいですが、一歩引いたところから醒めた目で眺める習慣はこの頃からだと思います。

 いまは大学講義でネタにするくらいなので何とも思っていませんが、当時はそれなりに頭にきていたと思います。ただ、市役所に苦情に行くくらいの感情は当時でも全くありませんでした。何しろ、時代がちょうど昭和から平成に変わる頃ですから、AIはおろか、データ管理、ペーパーレス化という言葉もまだほとんど登場していません。記憶違いでなければ、大学の履修登録だって、直接、先生に履修登録願を提出していた時代で、人の手による管理が当たり前なので、間違いがあって当然です。

 当時の私が直面したケースは、①人間に起因する誤りである、②定められたマニュアルや手順どおりに業務を行ったにもかかわらず発生した事故ではない、ことから「ヒューマン・エラー」と呼ばれる事例に該当すると思われます。この手のミスは、ダブルチェック等で大幅に低減することはできますが、残念ながら完全にゼロにすることはできません。

 他人から「短気」だとか「圧が強すぎる」とか言われる私ですが、この手のミスに対して、実害を蒙った場合、その場では当然怒りますが、原因究明や今後の予防策をしっかり講じる限り、誰かに責任をとらせたり追い詰めるようなことは、自分に何のメリットもないのでそんな要求はしません。むしろ、「そんなに心配ならば、もっと余裕を持って行動しろ!」と言われ続けてきた世代なので、ミスはあって当たり前、という考えが刷り込まれています。もちろん、対応が「甘い」と言われることも多いですが、私は、誰かが断罪され、その様子を見ることで溜飲を下げるタイプではないので、考えを変える気はありません。

 一方で、意図的かどうかはわかりませんが、近年は、「ヒューマン・エラー」という言葉を拡大解釈する風潮があるような気がしてなりません。例えば、現在、注目を集めている「毎月勤労統計」(厚生労働省)の不正に関して、新聞記事では『担当者は「統計分野ではほとんどが抽出するというやり方だった。実務レベルで淡々と行われていて、統計上(賃金額などを)改竄(かいざん)するという意図はなかった」』と、あたかも不注意で起きた事故のように掲載されていましたが、自らのHPで調査方法について、以前より堂々と「従業員500名以上の事業所については全数調査」と明記しているのですから、この言い分はどうなのかな、と疑問に感じます。

 それでも、この不正が2004年にまで遡るという報道を見聞きして、「2001年の省庁再編が影響していたのかな…」と、日頃伝え聞く厚労省職員の激務振りと重ねあわせることで、個人的には同情を禁じ得なかったのも事実です。しかし、今回の事態はルールを無視し、しかも長年に渡って隠していたのですから、「ヒューマン・エラー」の範疇を大きく逸脱した「不正行為」であると言わざるを得ないでしょう(だから、抽出データでも実体経済を把握できるとか、そういう次元の話ではないのです)。

 公務員の不祥事なんか、ちっとも珍しいことでもないし、まして今回は収賄や死亡事故が起きたわけでもないのに(失業保険等の過少給付の問題はありますが、金額それ自体に関して、私個人は正直関心はあまりありません…)、何でそんなに目くじら立てるんだ?と既に言われてますが、答えは明白です。大学の定期テスト問題を作り替える必要に迫られたことに加え、今年の公務員試験は一体どうなってしまうのか?という不安感にあります。私から言わせれば、総合職経済区分および労働基準監督官受験生でこの問題を他人事のように考えている人は、自分の置かれている立場をちゃんと理解できていないのだろうと認識しています。

 新聞やTVでは、失業保険等の過少給付の問題ばかりがクローズアップされていますが、毎月勤労統計は基幹統計であることから、公務員試験に関係するものだけに限定しても、調査結果は下記のように広範に活用されています。

(厚生労働省)

・「労働経済の分析(いわゆる労働経済白書)」

労働基準監督官試験では、労働事情および労働経済の2科目において使われており、出題数もかなり多いです。

(内閣府)

1 経済分析(月例経済報告、経済財政白書等)

月例経済報告では、労働経済情勢を示す重要な指標として、現金給与総額指数、きまって支給する給与指数、所定外労働時間指数が取り上げられています。また、「経済財政白書」等においては、労働経済情勢を示す指標として毎月勤労統計の結果が多く利用されています。

2 景気動向指数

所定外労働時間指数(調査産業計)が一致系列に、常用雇用指数(調査産業計、前年同月比)および、きまって支給する給与(製造業、名目)が遅行系列に採用されています。

3 国民経済計算の推計の資料

国民経済計算の推計に際し、雇用者報酬の算定資料となっています。

 経済区分の経済事情どうなってしまうんだろう…と不安になってしまいますね。あくまで希望的観測ですが、仮に2004年以降もきちんと全数調査をしていたとしても、景気判断を改めなければならないほどの大きな違いにまでは至らないだろうと思います。

 しかし、昨年1月に実施された標本交替によって、毎月勤労統計の賃金データにおいて「継続標本(共通事業所)による前年同月比」も参考提供しなければならないくらいの変動が発生しましたが(これについて知りたい方は厚労省HPをご覧ください、というか経済区分の方は統計学の復習と思って、是非自分の眼で確認してください)、同程度の変動が起きないと断言することもできません。さらに言えば、全数調査を3分の1抽出に変更し、それを長年にわたって継続した結果、雇用・労災保険の過少給付額が推計で537億円にのぼることから察するに、抽出自体に何らかの恣意性があったのではないかという疑念も残ります(もっとも、今回は抽出という行為を行ったこと自体がよくないのですが…)。

 まだまだ明らかになっていないことが多いし、これ以上は完全な憶測になってしまうので今回は終わりにしますが、いずれにせよ、今回の事態が政府統計に対する信頼を大きく失墜させたことは否めないでしょう。でも、逆説的ですが、みなさんには、統計・計量経済学にもっと大きな関心を寄せる絶好の契機になったのではないでしょうか。関心を寄せるだけでなく、是非、試験勉強にも十分な時間を割いてほしいと願っています(ここまで、結構、統計学で登場する用語が使われてますが、ちゃんと理解できてますか?)。経済区分受験なのに、この科目に苦手意識を持っている人は信じがたいくらいに多く、そして、そんな人でも合格できてしまうのがこれまでの経済区分でしたし、きっと今年の試験でもそうした受験者は多いことと思います。でも、データと正しく向き合えない経済区分受験者なんて、いったい誰が欲するんでしょうか…。

 さて、これだけずさんなデータ管理をされるのならば、調査回答を求められた際には法人代表でもある私は拒否したくもなりますが、残念ながら毎月勤労統計に代表される基幹統計調査に関して、拒否権発動なんて認められておりません。

<参考:統計法の関係条文>

(報告義務)

第十三条 行政機関の長は、第九条第一項の承認に基づいて基幹統計調査を行う場合には、基幹統計の作成のために必要な事項について、個人又は法人その他の団体に対し報告を求めることができる。

2 前項の規定により報告を求められた者は、これを拒み、又は虚偽の報告をしてはならない。

第六十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。

一 第十三条の規定に違反して、基幹統計調査の報告を拒み、又は虚偽の報告をした者

二 第十五条第一項の規定による資料の提出をせず、若しくは虚偽の資料を提出し、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者

 ここのところ、時事ネタをとりあげてばかりですが、政権批判に結び付けるつもりなんか全くありません。なにしろ、いま私が最も対峙しなければならないのは写真に写る相手の次なる行為を予測し、どう阻止するかにあるのですから…。

 それでは、今日はこの辺で。


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