みなさん、こんにちは。不安を打ち消すかのように日々、卒業生の方は追いコンや学生時代最後のイベントに、そして4年生は試験勉強に勤しんでいることと思います。そして、今日から国家公務員総合職試験の出願受付開始です!出願期間は極めて短いので、忘れないでくださいね!今日は、現実に起こっている出来事をネタに、択一試験対策にもなる事についてお話しします。
昔と違い、総合職試験の学習期間が短縮しているせいか、この時期でも、2次試験向けの講座の問い合わせはもちろん、択一試験対策として事情系科目の講座に関する問い合わせが例年に比べてかなり増加しています(その代り、来年向けについては、ほとんど動きがありません…)。おそらく、近年の択一試験の合格最低点の低下傾向(経済区分の話です!)により、自分にもチャンスがあるかもしれない!と、希望を持つ受験生が増えている結果だと私は認識しています。
しかし、そんな皆さんの希望を萎えさせる出来事が連日報道されています。きっと、一部の卒業生(若手職員も…)の方は、「自分は、進路選択を誤ったのでは?」と真剣に悩んでいるのではないでしょうか?私はというと、面白がって、普段めったに見ない参議院の予算委員会さらには、証人喚問の時には衆議院の予算委員会もTVを通じて視ていました。しかし、ハタと我に返りました。2月末から参議院予算委員会って開催されていたけれど、8億円(あるいは100万円)についてひたすら堂々巡りする一方で、肝心なH29年度一般会計予算(こっちは約97.5兆円と過去最高額です!)について、全然話にも出てこない…。結局、予算は成立してしまいました…。
もちろん、予算の議決について、衆議院の優越が認められていることくらい、法律大嫌い人間の私でも知っています。だから、どのみち一般会計予算は成立することも理解しています。しかし、H29年度予算は過去最大規模だけあって、新たに予算措置が講じられたものが随所に見られます(今年の総合職試験受験予定の方、29年度一般会計予算については、出題されないので無理して数字を覚える必要はありません…)。それらが、一部の専門家を除いて、8億円だか100万円だかのために多くの人々の関心を呼ぶことなく採択、そしてまもなく執行されてしまうことに、私は違和感を感じます(というか、真に重要なものが何か見極められない、あるいは見ようとしない姿勢に、見えざる力が作用しているようで恐怖すら感じます)。
今年度予算について、注目に値するものはたくさんありますが、私が最も気になっているのは、最大の歳出割合を誇る社会保障関係費でもなければ、地方交付税でも公共事業でもありません。文教関係費です…というと、不思議な顔をする人が結構います。たしかに、今年度一般会計予算における、文教関係費(文教及び科学振興費全体でみても)は、一般会計予算全体が過去最大の予算規模であるにもかかわらず、前年に比べて減少しています。しかし、予算のポイントをよく読むと、ちゃんと議論しないと次年度以降、なし崩し的に予算規模が増大しかねないものが多々見られます。
その代表格が、「給付型奨学金の創設」でしょう。名称くらいは皆さんお聞きになったことがあるかと思います。実は、今年度より、経済的負担の大きい「私立・自宅外」の学生について先行実施されます。対象がかなり限定されているので、金額的にも70億円と、他の項目に比べると小さなものですが、①新規創設、②次年度から本格実施、③財源に関する記述が曖昧、ということから、財政規律が大きく歪む可能性を孕んでいると、私は危惧しています。しかし、子どもを含む若年層向け政策に、ましてや私のような中年男性が異議を唱えることはかなり勇気がいります。書き方一つ間違えると、思いもよらぬレッテル張りをされてしまいます。
私自身、学生時代には日本育英会(現・日本学生支援機構)および父親の勤務先が創設していた奨学金を受けており、博士課程修了時には合計で約700万円にも達していました。現在では返済は完了していますが、返済時にはかなり苦労しましたので、現在そしてこれから返済をしなくてはならない人たちの不安感は人一倍理解していると思っています。それゆえ、「給付型奨学金の創設」そのものには反対していません。だけど、それは財源についてきちんと確約が取れている場合においてであります。「立派な政策だから」「困っている人の役に立つから」で推進していくのならば、私は「国としては、学生支援機構をもっと活用することで充分だろ!」と抵抗します。決して感情論からではありません。前提条件にもよりますが、試験勉強から導き出される答えだからです。
財源について、通常考えられるのは、税金か公債(最近俎上にある教育国債もその一つです)かだとおもいます。税金ならば、課税の仕方次第ですが私は賛成します(お金減るのは嫌だけど…)。でも、大学の講義で100人規模のアンケート取りましたが、増税にはみんな猛反対です。受益者に最も近いはずの現役大学生でこうなのですから、社会人ならばどうなるのでしょう…。一方、公債だと、この国の借金が既に天文学的数字に達しており、イメージが湧かないせいか、知識としてはともかく、増税ほどの抵抗はみられません(これを財政錯覚といいます。受験生の方、代表的論者の名前、ちゃんとでてきますか?)。
私は、公債を財源とする奨学金制度には反対です。理由について、ものすごく単純なケースで説明します。みなさんが奨学金給付対象で、私が教育国債の引き受け手だとします。この場合、私が国債購入のために支払ったお金が、みなさんに奨学金として渡ります。やがて、国債の償還時期になったとします。引き受け手である私は、元本に加え利息を受け取ることができるはずです。では、この「元本+利息」は誰が支払うのでしょう?答えは、社会人になった皆さんです。そうです。これなら、学生支援機構の奨学金と何ら変わりありません。それどころか、受益と負担の関係が明確である分、現状の奨学金制度の方がはるかに健全です。
このように言うと、いわゆる奨学金地獄の実態を持ち出し、「お前は自分が返済できたから、みんなも同じ体験をしろというのか!」とか「取り立ての過酷さをわかっていない」とか言われます。でも、私が言っているのは財源の話であって、返済を巡る問題ではありません。もし、奨学金を巡る問題の核心が返済部分にあるのならば、それは予算措置の範疇ではなく、日本学生支援機構の運営方法を議論の俎上に載せるべきでしょう。これから高等教育を受ける人の不安を軽減したいのか、それとも今まさに金銭面において苦悩している人の不安を軽減したいのか、自分が見ている対象が何かをしっかり見極めるべきです。
しかし、8億円やら100万円のせいで、予算についてろくに議論されることもないまま「給付型奨学金」は創設されることとなってしまいました。名称が立派な分、ほっとくと膨張しかねません。今後は、財源を巡る議論が一部の専門家だけでなく、一般の人たちにも関心を持ってもらえるようにすべきでしょう。
今回は、給付型奨学金について書きましたが、一度火がついてしまったらもう誰にも止められず、真偽が脇に置かれてしまうことは、あちこちにみられます。そうしたときにこそ、少し冷めた視線で対象物をみることが、これから試験を受ける皆さんに求められているように、私は感じています。試験勉強で今はそれ以外のことを考える余裕はないかもしれないけれど、流れを追うことだけが就活ではありません。
それでは、また。